Gate Research:タートル・トレーディングルール―年間リターン最大62.71%を実現したクラシックなトレーディングシステム

上級8/4/2025, 7:07:31 AM
Gate Researchでは、本レポートにおいて、従来のタートル・トレーディング・システムおよびその暗号資産市場での適用可能性を検証し、改良版であるAdTurtleタートル・トレーディング・システムの設計思想や実証パフォーマンスの詳細な分析に重点を置いています。歴史的なGT/USDTデータを用いて体系的なバックテストを実施し、従来戦略と改良戦略が高ボラティリティ市場でどのような成果を上げたかを評価したうえで、それぞれの強み、弱み、今後の最適化方針についても考察しています。

主なポイント

  • タートル・トレーディング・ルールは、ブレイクアウトおよびボラティリティに基づく代表的なトレンドフォロー戦略です。ドンチアン・チャネルによるエントリー・エグジット判定とATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)を活用したストップロス及びポジションサイズ管理を組み合わせ、トレンド捕捉を合理的かつ体系的に実現します。
  • AdTurtleでは、従来の枠組みにスライド式ATRストップロスと排他ゾーン(エクスクルージョンゾーン)メカニズムを追加しています。これによりストップロス幅や再エントリーのタイミングを柔軟に調整でき、暗号資産市場特有の高ボラティリティやもみ合い局面でも、戦略の堅牢性およびパフォーマンスが大きく向上します。
  • バックテスト結果では、改良版戦略がGT/USDTの1時間足データでオリジナル・タートル・システムを上回る成績を示しました。特にシャープレシオの向上、最大ドローダウンの縮小、安定した年率リターンの維持において優位性を発揮しています。高頻度型はトレンド感度・リスク管理の双方で大きな改善が確認されました。
  • 今後の展望としては、レバレッジ取引やパラメータ最適化の拡張、オンチェーンデータやAIベースのシグナル統合による更なるパフォーマンス向上とリスク管理強化が期待されています。

はじめに

タートル・トレーディング・ルールは、1980年代に著名トレーダーのリチャード・デニスおよびウィリアム・エッカートが構築したトレンドフォロー型トレーディングシステムです。実験的に未経験者へ短期間で明確なトレードルールを伝授した結果、「タートル・トレーダー」と呼ばれる彼らは飛躍的な収益を上げました。本実験はシステマティック・トレーディングの再現性を証明し、トレンドブレイクアウト戦略がテクニカル分析の柱となる契機となりました。

伝統的金融市場では、タートル・トレーディング戦略は明快なエントリー・エグジットルール、リスク管理、トレンド判別の有効性から高い評価を得てきました。例として、1990~2000年のコモディティ先物で最大年率24%、2005~2015年のハンセン指数先物で年率12%という実績があります。

暗号資産市場の拡大により、高ボラティリティ・強いトレンド特性を持つこの分野は、テクニカルトレーディング戦略の新たな舞台となりました。しかし、24時間365日取引、平均ボラティリティの高さ、センチメント主導の急変動、市場流動性の小ささなど、従来市場と根本的に異なる点があり、従来型戦略の直接適用には課題があります。

このことから、タートル・トレーディング・ルールは暗号資産市場の高ボラティリティ環境下でも有効か?という重要な論点が生じます。

近年、学術界・業界でトレンドフォロー戦略のデジタル資産適用に関する検証が進行しています。その一例がAdTurtle(2020)フレームワークであり、本稿では改良型タートル・システムであるAdTurtleをGT/USDTに適用し、2022年~2025年のヒストリカルデータでバックテストを実施しています。主な目的は以下の通りです。

  • 暗号資産トレードにおける従来型タートル戦略の有効性評価
  • AdTurtleのスライド式ATRストップロス/排他ゾーン導入の有用性検証
  • 暗号資産市場の特性を踏まえたAdTurtleの最適化方針提案

従来型タートル・トレーディング・システム

従来型タートル・トレーディング・システムは、トレンドフォロー戦略の代表格です。その本質は「直近高値上抜けで買い、トレンド継続中は保有、増し玉し、トレンド転換時に手仕舞う」ことにあり、以下の主要構成要素を持ちます。

2.1 エントリーシグナル:価格ブレイクアウト

  • 直近日間の最高値(ドンチアン・チャネル上限)を上抜いた場合ロングエントリー
  • 直近日間の最安値(下限)を下抜いた場合ショートエントリー
  • Nは期間選定ウィンドウとなり、トレンド持続性を示します
  • 主な設定例:

  • ファスト型:エントリーN=20日、エグジットM=10日

  • スロー型:エントリーN=55日、エグジットM=20日

2.2 ストップロス設定:ATRベース

  • エントリー時にストップロスを設定:

  • エントリー価格 ± 2×ATR

  • ATRは市場ボラティリティ測定指標
  • ATR期間n(標準は14)で変動幅平均を算出

2.3 ポジションスケーリング:トレンドに沿ったピラミッディング

  • トレード方向へ0.5×ATR進むごとに:

  • 上昇:ロング増し玉

  • 下落:ショート増し玉
  • 各増し玉のリスクは資産の1~2%
  • 最大4回まで追加、利益最大化とリスク調整を両立

2.4 エグジットシグナル:反転ブレイクアウト

  • 短期ドンチアン期間(エグジットチャネル)で逆方向にブレイクアウトすると全決済
  • トレンド転換の示唆
  • 全ポジション決済で利益確定または損失限定
  • エグジット期間はエントリー期間より短期(10~20日等)

2.5 資金管理とリスクコントロール

  • 1回の取引損失は口座残高の2%以内に限定
  • ATRに基づきポジションサイズを動的に調整:

  • 高ボラ:小サイズ

  • 低ボラ:大サイズ
  • リスク制御を最優先し、都度精密に計算

AdTurtleトレーディング・システム

AdTurtleは、クラシックなタートル戦略を高度化したモデルです。コアとなるブレイクアウト論理を残しつつ、ストップロス設定・エントリー条件ともに堅牢性を強化しています。ATRを活用した「排他ゾーン」を設け、ストップアウト直後の再エントリーを回避し安定性を強化。動的ATRストップロスと排他ゾーンロジック導入がAdTurtleの特徴であり、主な目的は次の3点です。

  • ストップアウト直後の再エントリー防止
  • 高ボラティリティ市場での安定性向上
  • 高頻度・自動売買環境への適応

主なコンセプト:

  • スライド式ストップロス:価格が進むほどストップロス水準も有利方向にスライドし、利益を部分確定
  • 可変ストップロス:ATRに応じてストップ幅を動的調整し、市場環境に適応
  • 排他ゾーン:ストップアウト後は緩衝帯(排他ゾーン)を設け、価格がこのゾーンを抜けるまで再エントリー不可。もみ合いによる連続損切りを回避

下図はAdTurtleシステムの構造を示しています:

3.1 エントリーシグナル:価格ブレイクアウト+排他ゾーンフィルタリング

  • 引き続きドンチアン・チャネルでトレンド発生を判定
  • 「排他ゾーン」メカニズムを新規採用:

  • 前回取引がストップロス終了時、すぐには再エントリーしない

  • 価格が前回ストップロス±Y×ATRを超えて初めて新規エントリー可能
  • 連続損切りや過剰売買の抑制に有効
  • ドンチアン期間の使い分け:

  • 標準:エントリーx、エグジットx/n

  • 拡張:再エントリーy、再エグジットy/m(高頻度取引抑制)

3.2 ストップロスメカニズム:トレーリング+可変ATR幅

従来の固定2×ATRストップロスに対し、AdTurtleはトレーリング+可変ATR幅の組み合わせでより柔軟なリスク制御を実現します。

  • エントリー時の初期ストップロス:

  • ロング:

  • ショート:

  • 価格の有利進行時は:

  • ロング:

  • ショート:

  • 可変幅ロジック:

  • 新キャンドルごとにATRを再計算:

  • ボラ拡大時は自動的にストップ幅拡大、縮小時は幅を狭めて対応可能です。

この仕組みにより、

  • トレンド利益の確定を強化
  • 短期ノイズでの過剰反応を回避
  • 損切り執行の合理性や迅速性が向上

3.3 トレンドフォロー・ピラミッディング:トレンド継続時の増し玉

  • 価格がZ×ATR進むごとに自動的にポジションを追加(Zは感度調整パラメータ)
  • 各増し玉は口座資産4%リスクを上限とし、最大4回まで(総リスク20%以内)
  • ロジックは従来型と同様で、強いトレンド時に段階的な増玉を行います

3.4 リスク管理:動的サイズ設定+ポジション制御

  • 現行ATR値に応じてポジションサイズを動的調整(高ボラティリティ=小サイズ)
  • 排他ゾーン・動的ストップロス等により、執行の堅牢性とリスク管理効率がさらに向上

3.5 両タートルシステムの比較

1980年代に一世を風靡したタートル・トレーディング・システムは、ドンチアン・チャネルによるブレイクアウト検知、固定ATRストップロス、ピラミッディングによるトレンド追従をコアとし、トレンドフォロー戦略の代名詞となりました。

しかし、市場構造の変化—特に高頻度取引や虚偽ブレイクアウト頻発化—により、従来型タートル戦略には大きな限界が生じています。

問題となるのは、ストップアウト後の再エントリーが早すぎて、レンジ相場で損失を連発しやすいこと。固定幅ストップは高ボラ相場で損切りが早まり、低ボラでは逆にリスク過大に。極端な値動き後にも自動的に売買を繰り返すため、ドローダウン増大や安定感低下につながります。

AdTurtleは「ブレイクアウトエントリー+ピラミッディング+リスク管理」という基本型を堅持しつつ、

  • 排他ゾーン
  • 可変ストップロス
  • 動的エントリーフィルタ

を強化しています。

排他ゾーンは特に革新的で、ストップロス決済後はすぐに再エントリーせず、前回ストップロス価格±Y×ATR突破まで新規エントリーを見送ります。これがレンジ相場での損切り連鎖を防ぎます。

ストップロスはトレーリング+可変幅モデルを採用し、価格が有利方向に動けばストップも自動追従。バンド幅もATRで動的調整され、実際の値動きに即応し、短期ノイズでの早期損切りを抑えます。

強いトレンド下では従来型同様にZ×ATRごとに増し玉し、利益が出ている時のみポジションを追加。増し玉数・総リスクも厳格管理します。

ポジションサイズもリアルタイムATRで連動させ、高ボラ時はサイズ縮小、過度なリスク集中を防ぎます。

最終的に、AdTurtleは複雑な市場環境に耐えうる堅牢性・柔軟性を実現しています。従来型の完全な代替ではなく、市場状況次第の使い分けが可能。明快なトレンドが続くコモディティや株価指数では従来型、暗号資産やFX等の高ボラ・もみ合い市場ではAdTurtleの排他フィルター・動的ストップが低ドローダウン・高勝率をもたらします。

トレーディング戦略のバックテスト

両戦略の実運用パフォーマンス検証のため、GT/USDTペアをGate取引所にて2024~2025年の1時間足データでバックテストしています。初期資金は1,000,000 USDT、レバレッジなし、総手数料0.1%/ラウンド、1約定あたりスリッページ0.05%を考慮しています。

4.1 データソースと前処理

  • 対象銘柄:GT/USDT
  • データ出所:Gate API(Kline)
  • 対象期間:2024年1月1日から2025年1月1日
  • 時間軸:1時間足
  • データ処理:フォーマット統一

4.2 トレードおよびバックテスト仮定

  • 初期資金:1,000,000 USDT
  • レバレッジ:不使用
  • 取引コスト:ラウンド毎に手数料0.1%、各エントリー/エグジットにスリッページ0.05%
  • ポジション上限:1銘柄あたり口座資産30%まで
  • シグナル発生時、次足始値で執行

4.3 戦略パラメータ最適化

主要パラメータは(X / Y / N / M / P)の5点セットで整理されます。

  • X:エントリー期間(ドンチアン・チャネル)
  • Y:エグジット期間(同)
  • N:ATR計算用期間
  • M:初期ストップロス倍率(×ATR)
  • P:フィルターゾーン倍率(×ATR)

パラメータ選定はグリッドサーチ法で最適組み合わせを探索しました。

4.4 バックテスト結果

以下は3戦略で最適パラメータを適用したバックテスト結果チャートです。

従来型タートル戦略は明快なトレンド局面では高パフォーマンスですが、レンジや急転換局面ではドローダウンが大きくなりやすい傾向が見られます。AdTurtleは排他ゾーンと動的ストップロスで多くの偽シグナルを排除し、総合リターン・シャープレシオ・最大ドローダウンで従来型を上回ります。特に短期サイクル型の安定性が際立ちました。グリッドサーチ最適化後、最高のパラメータでは年率62.71%、最大ドローダウン15%未満を達成しています。

まとめ

タートル・トレーディングは構造が明快かつ論理が厳格なトレンドフォローモデルとして独自の地位を確立しています。その体系化されたトレンド判別・リスク管理の枠組みは暗号資産市場でも依然として大きな有効性を示していますが、暗号資産特有のボラティリティや取引仕様、投資家層の違いもあり、適用には構造的な改良が不可欠です。AdTurtle戦略は排他ゾーン・動的ストップ・可変型ピラミッド閾値の導入により、高頻度でもみ合いの多い市場で生存性とリターンの安定性を大幅に向上させています。

今後はさらなるパラメータ検証やレバレッジ活用でリターン向上も期待できます。加えて、オンチェーンデータ(資金移動・ポジション変化)、マクロセンチメント指標(Fear and Greed Indexなど)、機械学習シグナルとの統合を進めることで、暗号資産市場のトレンドフォロー戦略の知能化がさらに促進されるでしょう。

参考文献

Gate Researchは、ブロックチェーン・暗号資産の総合リサーチプラットフォームとして、テクニカル分析・市場分析・業界調査・トレンド予測・マクロ経済政策分析など高品質な深掘りコンテンツを幅広く提供しています。

免責事項
暗号資産市場への投資は高いリスクを伴います。投資判断に際し、ご自身で十分な調査・理解を行った上でご判断ください。Gateは本内容に基づく損失・損害について一切責任を負いません。

著者: Puffy
レビュアー: Ember, Shirley, Mark
* 本情報はGateが提供または保証する金融アドバイス、その他のいかなる種類の推奨を意図したものではなく、構成するものではありません。
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